電動コンポを試す

SRAM Red etap をカンパ仕様のRL9に装着

Penguin!! December 30, 2018



電動コンポ

寄る年波で体が弱ってきて、自転車で峠登りに精を出せるのもあと数年、その間に気になるコンポーネントは制覇するべきだと思い立ち、電動コンポの導入を考えました。LynskeyのチタンフレームにChorusを組み合わせたバイクを作ったばかりなので、これを改造するのはもったいない。Lynskeyれに比べると、Anchor RL-9のAthena、ちょっと問題があります。どうもシフトが決まらない。一代前のパナチタンから載せ替えたAthenaですが、もう1.5万km走ったので、いろいろ寿命が来ていて、いくつかのパーツは新調せざるを得ませんでした。まあ、そういう具合なので、フレームを替えるならやはりコンポーネントも一新すべきかと。いろいろ技術を蓄えてきたので、自分でできるでしょう。

というわけで、RL-9のカンパを電動化するとして、現状のカンパのまま、カンパのEPSにグレードアップするのかというと、EPSはあり得ないくらい高価なくせに評判が良くありません。電動コンポは、シマノのUltegra グレードの Di2 が人気の様相です。シマノは、2009年頃からDuraAce版のDi2が出しました。電動の変速機なんて意味あるのかという議論がありましたが、2011年にUltegra版が出て価格が下がってからは、「一度電動変速に手を出したら手動には戻れない」などの評価が相次ぎました。安くなったと言っても、手動セットが10万円くらいなのに、17万円になります。これは新調した場合ですが、手動式が載っている場合は、追加で10万円くらいかかるようです。

ロードバイクのコンポーネントは、シマノが最大シェア、2番がCampyでしょうが、3番手には、SRAMがあります。SRAMは、米国の会社です。もともとはMTB用コンポーネントの会社だったようですが、今はロードコンポもそろえています。Avidというブレーキは、SRAMの子会社ですが、私が以前乗っていたBianchi PassoにAvidのブレーキが使われていましたが、ひどいものでした。だから、SRAMにいい印象がありませんが、SRAMの最高級ロードコンポ-ネントのRedシリーズにetapという電動コンポが出ていて、これが素晴らしいようです。

SRAM red etap

etapの何が素晴らしいかというと、コマンドの送信が、ワイアレスということ。シマノもCampyも、シフトレバーからのコマンドは、有線ケーブルを伝ってディレーラに送られます。シマノでは、この有線ケーブルが、CAN (Control Area Network) というのでびっくり・感激したのは1.5年ほど前のことです。CANとは、Boscheが開発したISO標準規格の自動車用のネットワークで、原罪の自動車はすべてCANで制御されています。たとえば、ターンシグナルランプ、ドアロック、車輪の回転数などの情報が、CANで通信されています。CANは、高速版で500kbpsの速度で、1パケットが(通常は)最大8バイトのペイロードしか送れません。送信アドレス、受信アドレスがないし、8バイトのペイロードでは暗号化もしにくいので、簡単になりすましができる、セキュアとは言い難いネットワークです。自動車業界は、Flexrayなどに切り替えたいのでしょうが、すでに大量のCANデバイスが流通しているので、CANを使い続けています。新しい自転車のネットワークにCANを使うというのは、進んでいると見るか、遅れていると見るべきかわかりません。

ところが、etapは、CANのような有線方式ではなく、無線方式を選択しました。考えてみれば、目から鱗、当たり前であしょう。シマノやCampagnoloは、悔しがっているのではないでしょうか。電線がないことがいかに素晴らしいかは、後述します。ただ、無線方式にすると、電池をコンポーネントごと個別に装着する必要があります。電動コンポーネントとは、左右のシフターとフロントディレーラ、リアディレーラの4つのコンポーネントですから、4つに別々の電源=電池が必要になります。これはちょっと面倒です。重量的にも無駄が出ますが、ネットワークケーブルの重量減で十分に取り戻せます。

シマノの電動Di2の配線図 (たとえば https://irohaka.com/?p=1305 )を見ると、無線式がいかに素晴らしいかがわかります。コンポーネントをつなぐケーブルも、その結束点になるジャンクションボックスも不要、有線式では電池が1個なのはいいが、かなりの大きさになるので、シートポストに埋め込んでフレーム内に電線を這わす、なんて、とても面倒なことになります。

もう一つ、etapの面白い機能は、右シフターはリアディレーラを高速側にシフトさせ、左シフターが低速側にシフトさせるという割り当てです。これまでは、左手がフロント専用(ブレーキは後だが)、右手がリアディレーラ専用だったのが、左右両方を使ってリアディレーラを制御します。では、フロントはどうするかというと、左右シフターを同時に操作すると、インナーギアとアウターギアが交代します。これはおもしろい方式ですが、従来とは全然違うやり方なので、慣れないと間違うでしょう。手動式の世界は、シマノもcampyもSRAMも同じやりかただったのが、電動では分化しました。自動車で言えば、右足がアクセル、ブレーキ、左足がクラッチだったのが、右足がアクセル、左足がブレーキになるようなものでしょうか。

etapの調達

etapはいくらするのか? グループセットがAmazonでは20万円以上します。Di2が10万円くらいだから、倍以上か。ところが、tweekscyclesでは、11.7万円で買えます。Wiggleやchainreaction などでもetapは扱っていないようなので、tweekscyclesはとても有用です。注文して2週間ほどで届きました。税金が7000円くらいかかったかな。

etapの取り付け・調整

取り付け法は、SRAMのWebサイトに行くとUserManualがあるので、ダウンロードして参照します。でも、Youtubeなどの動画を見た方が速いでしょう。最初に、4つのコンポーネントの無線ネットワークをペアリングさせる必要があります。ボタンの長押しを4回するだけ。数十秒で終わります。

チェーンをはずします。今回、チェーンは一カ所切った後で、KMCミッシングリンクでつなぐことにしました。フロントディレーラ、リアディレーラをはずし、etapを取り付けます。フロントディレーラは、直づけ用で、RL-9も直付けタイプなので簡単です。リアディレーラはもっと簡単です。

シフトレバーは、バーテープをはずし、ブレーキワイヤを外した上に、再度取り付けが必要なので、ディレーラよりずっと面倒です。ですが、シフトケーブルを付けなくて良いので、まあ簡単に終わるでしょう。

ディレーラ調整は、まず、フロントは、ディレーラの位置を微調整します。リミット調整は不要でした。リアディレーラは、ロー側で、チェーンがホイール側に落ちてしまいました。リミット調整は、シフトレバーのファンクションボタンを押しながら、シフトアップあるいはシフトダウンスイッチを操作すると、0.2㎜ずつアップ側、あるいはダウン側にずれます。この場合、チェーンがダウン側に行きすぎているので、ファンクションスイッチを押しながらシフトアップ操作、すなわち右側のシフトスイッチを操作します。3回ほど操作するとちょうど良い位置になりました。次に、シフトダウンを11回操作して、反対側のリミットを見ます。すると、今度はトップ側にはずれそうになっている。ここで先ほどの操作と逆をすると、トップ側のずれは解消できますが、ロー側でホイル側にチェーンが落ちやすくなります。etapは、ネジを使わずに電子的にディレーラーの微調整ができるのですが、ギア一枚ごとの微調整ができるわけではなく、11速全体をロー側かトップ側に0.2㎜単位でずらせるということのようです。これは誤算でした。とりあえず、チェーンが落ちない状態にはできました。

     
 front dereiluer  rear derailure  shift/brake lever  

blips 延長スイッチ

etap のシフトレバーには、blipsと呼ぶ延長スイッチが付けられます。シフトレバーを操作するのは、手でブラケットか下ハンを握ったときに限られますが、blipsを付けると、ハンドルの中ほどを握って気楽にライドしているときもシフト操作が可能になります。TTバーを付けたら、その先に付けることもできます。シフトレバーには、延長ケーブルを片側2本取り付けるソケットがあります。私は、23cmのblipsを購入して、ハンドル中央にスイッチを取り付けました。

garmin との連携

etap が無線方式であることのもう一つの長所は、サイクルコンピュータGarmin Edgeシリーズにつながることです。Edgeには、スピードセンサ、ケイデンスセンサなどいろいろなセンサが、おそらくANT+で接続できますが、etap ともつながるということは、etap の無線方式というのはANT+なのではないかと思います。私の使っているのは、2018年時点で最新型のEdge1030です。Edge1030をセンサー検知モードにしてetapを動かすと、すぐに見つかって、電動コンポ用の新しいページを作るかと聞かれました。以降、表示項目として、ギア位置、ギア比、etapの電池の充電状態などが表示できるようになります。ギア位置が表示できるのは大変便利です。以前、シマノのFlightDeckサイコンが、ギア位置を表示してくれていて重宝しましたが、カンパにはなくて残念な思いをしていました。ギア位置が表示されるのは、わたし的には大変うれしい機能です。

etapの使い勝手

まず、自転車を持ってみて、軽くなったと思いましたが、気のせいでしょうか。ケーブルが減ったから? さらに、ハンドル回りのケーブルが半減して、見た目すっきりなだけでなく、ハンドルの動きが軽くなりました。シフトワイヤーを2本、曲げる必要がないからです。これは思わぬメリットでした。

こぎ出して、かちかちとシフトします。まず、シフトダウンは、力を入れてレバーをぐいっと3-4㎝動かす操作だったのが、薬指で軽くタッチするだけですみます。圧倒的に簡単。シフトアップもカンパは右手親指でレバーを押し込む操作が軽いボタン操作になって、ストレスフリーです。フロントのシフトは、左右両手を使いますが、機械式のような力はいりませんから、とても簡単です。

ブラケットの形状は、今まで使っていた機械式のAthenaより太めです。特にブレーキレバーが横に広い。内部にスイッチを内蔵するためでしょうか。指で握りきれず、滑って逃げる感じがあります。ブラケット自体も太くなった感じがします。両方ともうれしくはありません。

ブラケットの

etapの変速動作は、Di2などよりレスポンスが悪いという評価が出回っています。私はDi2を使ったことがありませんが、別にetapが遅いとは思いませんでした。機械式よりはずっと速いのではないでしょうか。Di2より遅いとしたら、片手で行うリア変速と、両手で行うフロントの変速操作を区別するために、若干のディレイが必要だからでしょう。たとえば、システムが右スイッチを関知しても、その直後0.1-2秒に左手スイッチも操作されれば、リアではなくフロントの変速をしなければなりません。左右スイッチを全く同時に操作することはできませんから、このわずから余裕時間のためにシフトが遅れることは想像できます。しかし、そんな時間は、実際に変速機が動く時間に比べれば小さなものでしょう。

変速操作が簡単なので、変速回数も増えるのではないかと思います。Garminは、ライドが終わった後、変速回数も表示してくれます。雨引観音まで80kmのライドでは345回でした。

カンパのスプロケット+チェーンをSRAMのコンポで制御しているのですから、ディレーラのシフト量が微妙に違います。どうやら、SRAMの方が、リアスプロケットのギアピッチが大きいようです。カンパのスプロケを使っていると、チェーンがロー側、あるいはトップ側を越えてはみ出しそうになります。それで、スプロケのギアの間のスペーサを少し足してやることにしました。紙を数枚~十数枚整える、透明プラスティックのペーパーホルダーから、スプロケットのスペーサと同じ大きさでリングを切り出して、スペーサに追加してやります。ノギスで計ったら、ペーパーホルダーの厚みは0.2ミリでした。これを2カ所に入れます。3枚以上は入れない方が良さそうです。まあ、これでカンパを何とか制御できています。いずれ、フリーハブボディをシマノ用に交換して、シマノのスプロケに交換するかも知れません。

変速だけでなく、SRAMでカンパのキャリパーブレーキを引くという部分も非互換ですが、ブレーキレバーのストローク的には、何の問題もありません。ただし、カンパの最大の美点である、ゆっくりとしかし確実に効くブレーキフィーリングは劣化しています。大味なシマノに近づいたように思います。カンパのブレーキは、アーチとシューが特別なのかと思っていましたが、あのフィーリングにはブレーキレバーも貢献していたと再認識しました。

明らかな問題は、ホイールの脱着のためにブレーキをリリースすることができなくなったことです。カンパは、ホイール脱着のためにブレーキケーブルを緩める機能が、ブレーキレバー側に付いています。シマノ(やSRAM)は、ブレーキアーチ側にあります。だから、カンパのブレーキアーチをSRAMで使うと、緩めることができません。ホイールを交換するのがちょっと大変になります。

blipsは、便利なのですが、今までになかった機能なので、そこに付いていることを忘れてしまいます。ちょっとスイッチの動作も堅くて操作しづらいです。etapは、左右のシフトスイッチは、片側に1個ずつしかありません。もしも、右手だけでシフトアップ、シフトダウンの両方を指示しようとすると、どうしても片側にスイッチが2本必要になります。そうすると、このblipsも2つのスイッチになり、ケーブルも太くなるでしょう。こんなに簡単にblipsを追加できたかわかりません。etap のシフトの左右分離は、blipsを付けやすくするためだったのかも知れません。

電池は、1度充電しただけです。数回は走ってみないと容量がわかりませんね。

結論

カンパのドライブトレーンをSRAM Red etap で制御するという非互換な取り合わせですが、何とか動いています。非互換ですから、リアディレーラ調整は完全にはできませんが、特にギアとチェーンがひどく擦れ合うこともなく使えてはいます。

無線式のetap の取り付けは、簡単でした。使い勝手は、非常によろしいが、シマノ、カンパの機械式とは異なる操作になるので、使いにくい部分もあります。というか、etapに慣れた後、機械式の操作をするのが大変。かといって、全部をetapにするわけにもいかず、異なるインタフェースの器具を使い続けるのはつらいかもしれません。変速性能は満足しています。garminに表示が出るのもたいへんよろしい。blipsでスイッチを追加できるのもありがたい。

ブラケット形状、ブレーキのフィーリングは劣化しています。ホイールの脱着もしにくくなりました。

Tweekscycles で安く買えたので、総合的にコストパフォーマンスは悪くないと思います。