スズメバチの捕獲法について

専門家のご意見をちょうだいしました

 

農水省森林総合研究所の研究者からのご意見。

---- 引用はじめ ----


【質問】
○この「スズメバチ・ホイホイ」なる捕獲方法は最近開発されたものですか?

 ペットボトルに適当な誘引剤を入れたものは,国有林(営林署関係)では10年ほど前から使われています。最初の開発者?は誰かは分かりませんが。また,ペットボトルに限らなければ(たとえば一升瓶など手近な容器に誘引剤を入れたもの),より以前から,民間で使われている模様です(たとえば養蜂家や果樹園)。


【質問】
○捕獲液のより効果的なレシピはあるのでしょうか?

 一般的なのは上記HPにあるように酒,砂糖,酢,ジュースなどを適当な割合で配合したものです。国有林でのスタンダード?は(清酒:酢:砂糖=1800cc:250cc:500gを混合して3等分)です。ちなみに私は焼酎(白波)+オレンジジュース=1:1で混合したものを使っています。これもよくかかります。
 ハチミツや砂糖液と比べると,グレープカルピスの誘因効果が高いということです(『スズメバチの科学』小野正人,海游舎,p.152)が,有意差があるかどうかは微妙なところです(カルピスは高価ですし)。ちなみに「スズメバチホイホイ」という名称は,この本でも使われています(笑)。
 誘引の有効成分については,上記の小野さんたちが現在研究されています。乳酸エチルなど,特定の物質に対して,ハチの触角が強い反応を示すことはわかっています(上記の本をお読みください)。

 さて,誘引剤はなんであれ,とにかくこのトラップでたくさんハチがとれることは間違いなく,デモンストレーション上の効果は抜群です。またハチのモニタリングにも重宝で,実際私も使っています。ただし春先の女王の捕殺によって夏以降のハチの巣が減るかどうかは別問題です。一般に女王バチは過剰に生産されます。春先に飛んでいる女王バチのうち,ワーカーを出現するまでに生存できるものは,自然状態でも1割にも満たないと推定されます。したがって,この死亡率を人為的誘殺などで多少増加させても,巣を減らすうえの効果は小さいか,ほとんどない,と私はいまのところ考えています。ただ全く効果がないかどうか,あるとすればどれくらいか,については理論面も含めて今後の研究が必要です。


ちなみに、返信をいただいた牧野俊一(森林総研)さんは、ハチ専攻の昆虫学者です
。文中に出てくる小野正人さんはスズメバチ専門の研究者です。小野さんには別メー
ルで同様の質問を送っておきました。

「スズメバチほいほい」がすでに正式名称であるとは知りませんでした。

---- 引用終わり ----


さらに、玉川大学のスズメバチ専門家である小野正人さんから、2000年8月21日に下記のコメントをもらいました。

(仲介くださった三中信宏さん、ありがとうございます)

---- 引用はじめ ---- 

 さて、お尋ねの「スズメバチ・ホイホイ」の件ですが、いわゆる「ゴキブリ・・・」 にちなんで安易に命名しました。当初は、オオスズメバチの集合フェロモンを粘着紙 の上に設置してミツバチの巣箱の上などに置き、原理的にも「ゴキブリ・・・」と同 様な仕組みで働き蜂を捕殺していました。しかし、フェロモンでは種特異性が高く、 オオスズメバチだけにしか効果がないためにスズメバチ属が共通に好む「発酵臭」に 目をつけたわけです。いろいろな餌が用いられていますが、私の経験では「カルピス グレープ」を約2倍に薄めて発酵させたものがもっとも誘引効果が高いようです。そのヘッドスペースガスを分析するとアルコール類、有機酸類およびエステル類などが 多数含まれていてそのほとんどの同定作業は終了しています。しかし、メジャーな化合物をブレンドしただけでは高い誘引効果は得られずに、現在もなお「・・・ホイホ イ」の完成を目指して検討中です。

 スズメバチ類が発酵臭に引き寄せられるという現象は、古くから知られているよう で、例えばクヌギなどの樹液や熟した果物などに多くのスズメバチが集まっている光景は多くの人の知るところです。また、養蜂家の中には蜂蜜を希釈して発酵させたものを使って誘殺している例が、30〜40年前に「月刊ミツバチ」(既に廃刊)という雑 誌に紹介されていたと思います。その後も養蜂関係の情報誌には時々紹介されていて いるようです。蜂蜜をつかうとスズメバチだけでなくミツバチも誘引されてしまうために、器と中味の両面からさまざまな工夫がなされてきています。

 1900年の前半は主に養蜂学的害虫としてのスズメバチを防除するということが主眼 で、その試みもローカル的で一般の人に触れるようなことは少なかったと思われます が、ここ20年くらいの間にスズメバチに刺されて命を落とされる人が急増するに至り、 むしろ養蜂害虫といるよりは衛生害虫としての位置付けが重くなってきているようで す。とくに、林業に携わる方々などは常にハチ刺されのリスクと向かい合っておられるわけで、社会的にもよりグローバルな面から注目されているのです。  

さて、前置きが長くなりましたが、

【質問】 この「スズメバチ・ホイホイ」なる捕獲方法は最近開発されたものですか?  

多分その名称は、「スズメバチの科学」で使われたのが最初だと思います。ご紹介 のwwwサイトでは「スズメバチほいほい」という表記を使っています。しかし、発酵 臭でスズメバチを集めて殺すという方法は、随分昔から養蜂家の間で試行錯誤されて いたものと思われます。

【質問】 捕獲液のより効果的なレシピはあるのでしょうか?  

確かにコスト高にはなるのですが、「カルピスグレープ」を使用したものがもっと も効き目が継続するようです。しかし、この誘引現象には、スズメバチが遺伝的に引 き付けられる匂いと連合学習によって成立したものが組み合わさっており、効果は地 域ごとに異なる可能性があります。私たちの予備的な調査では、同じ餌を同じ形状の器に仕掛けても、東京や神奈川と新潟では全く効果が異なるのです。  

---- 引用終わり ----